霧発生モジュールをつかった模型作品撮影術:初心者でも楽しめる活用法

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模型作品を撮影する際、霧発生モジュールを活用すると、よりドラマチックで幻想的な雰囲気を演出することができます。今回は、カメラ初心者でも手軽にできる、霧発生モジュールを使った模型作品撮影の方法について、フォトグラファーとして活躍されている倉元一浩さんを招いて、カメラ初心者でも簡単に取り入れられる霧撮影の基本から、カメラ設定、スマートフォンを使った撮影方法までをわかりやすく紹介します。

ジオラマ協力:ⒸSEGAWA Modeling Co,ltd

1. 霧発生モジュールでの撮影の基本 

霧発生モジュールを使うことで、模型作品の世界観を強調し、臨場感あふれる写真を撮影することができます。霧は、戦闘シーンや破壊された建物をイメージした背景や朝もや、甲板上の水蒸気や排気煙の表現など、さまざまなシチュエーションで活躍します。

霧発生モジュールを使った撮影において大切なのは、以下のポイントです。

  • 風のない場所で撮影がキホンのキ!:発生した霧は非常に軽く、風の影響を受けやすいため、屋内での撮影が推奨されます。風のある場所では霧がすぐに散ってしまい、狙った効果を得るのが難しくなります。もし屋外で撮影する場合は、風が弱い時を選ぶか、風を遮る工夫が必要です。霧が均一に広がりやすく、撮影が安定します。
  • 撮影ブースを活用しよう!:撮影用ブースを使用することで、放出した霧が効率よく回り、より安定した表現が可能になります。ブース内で撮影を行うと、外部の風や空気の動きによる影響が少なくなり、霧が均等に広がるため、幻想的で立体的な描写がしやすくなります。また、ライティングの調整も容易になるため、霧の細かい粒子や動きをしっかり捉えたい場合にも効果的です​。
  • 背景を暗めに!素材も大事!:霧を撮影する際には、背景とのコントラストを意識して黒バックなどの暗い背景を選びましょう!、霧が白く浮かび上がり、作品が一層引き立ちます。素材は布や紙などのざらついた素材がよく霧を滞留させ効果が高まります。反対にツルツルした素材だと霧が流れやすいのでコントロールが難しく上級者向けですよ!
  • 光源を確保する:霧撮影では、ライティングが非常に重要です。霧は光を強く反射するため、光源の位置を工夫することで、霧の立体感を効率的に引き出すことができます。100均などで販売されている簡易な撮影用ライトでもOKですので、ぜひ複数の光源を用意しましょう!逆光や側面からの光を利用すると、霧が美しく浮かび上がり、作品のシルエットを引き立てます。こちらは次の章にて詳しく取り上げます。

これらの基本を押さえることで、霧発生の効果を最大限に引き出した効果的な撮影が可能です。

おススメ撮影ブース

童友社 凄! ホビー用LED撮影スタジオL プレミアムは赤・青・緑・黒・白の各バックシートが付属しバックシート自体も発泡性のため、程よく霧を滞留しさらにスナップボタンによる組み立てのため被写体後方への霧発射も可能な優れ物です!

各販売サイト
ヨドバシ・ドット・コム
Joshin webショップ
ビックカメラ.com

2. ライティングの工夫

霧発生モジュールを使った撮影では、ライティングやカメラの設定が重要です。これらの要素を適切に調整することで、霧の立体感や雰囲気を最大限に引き出し、模型作品に劇的な効果を加えることができます。霧の存在感を引き出し、模型作品を際立たせるために、以下のライティングテクニックを活用しましょう。

  • 逆光を活用する:模型作品の後ろや斜め後ろからライトを当てると、霧が光を反射し効果的に浮かび上がります。LEDライトやストロボを使用して、霧を強調するのがポイントです。

撮影メモ   シャッタースピード:1/40 絞り値:F5.6 ISO1600 

この撮影では、スモークを被写体の左後方から放出しています。メインライトは被写体の右上から当て、さらに被写体の真後ろにも逆光用のライトを配置しました。

ポイント: 後方にライトを置くことで、スモークの流れがより際立ち、幻想的な雰囲気の写真が撮れます。特に、後ろのライトを被写体でうまく隠すことが大事なポイントです。これにより、光源が直接見えないので、より自然な仕上がりになります。

撮影現場を上から図解したものがこちらです。

撮影メモ  シャッタースピード: 1/125 絞り値:F2.8 ISO1600

これは、逆光を使った撮影方法の別バージョンです。今回は、霧を被写体の後ろではなく、左横から放出しています。メインライトは被写体の右斜め上から少しだけ光を当て、被写体の後ろには逆光用のライトを配置しました。

ポイント: 後方にライトを配置し、シャッタースピードを速くすることで、霧の輪郭や流れがはっきりと見えるようになります。霧の存在感を強調したい場合には、このライティングのパターンが理想的です。霧の広がり具合によっては、非常に面白い写真が撮れる可能性があります。

側面光で立体感を出す

  • ロボットやシリアスなフィギュアの撮影で、モデルのディテールを強調したい場合は、側面から光を当てると効果的です。片側に強めの光、反対側にソフトな光を使い、陰影のバランスを取ることで、立体感を強調できます。さらに、側面光を使うことで、霧が模型の周囲を流れるように見え、ディテールや陰影が一層際立ちます。
  • 一方、美少女フィギュアなどを撮影する場合は、両サイドから均一に光を当て、影ができないようにするフラットな照明が適しています。これは被写体全体を均一に明るく照らし、滑らかな質感を引き出す手法です。実際に、現実のモデル撮影でも広く用いられている技術です。
撮影メモ シャッタースピード:1/80 絞り値:F5 ISO1600

今回の撮影では、霧を被写体の左後方と左横から放出しています。メインライトは右側から当て、補助として青いライトを使っています。霧は被写体の前後から挟み込むように放出し、ライトがボックスの壁に反射することで、被写体を包み込むような幻想的な効果を演出しています。

ポイント:ライトの配置: メインの光を右側から当て、青い補助ライトで冷たい雰囲気をプラス。これにより、立体感が際立ちます。
スモークの演出: 霧を前後から挟み込むように放出することで、被写体が霧に包まれたような効果が生まれます。
壁の反射を活用: ボックスの壁に光を反射させることで、被写体全体に霧が広がる印象を作り出します。

カラーフィルターを使って雰囲気を演出:上記のライティング方法に加え青や赤などのフィルターをライトにかけることで、被写体に特定のシーンや雰囲気に合ったカラーエフェクトを加え、より独自性のある写真が撮れます。

撮影メモ   シャッタースピード:1/80 絞り値:F5 ISO1250

今回は、霧を被写体の前方から放出しています。メインライトは被写体の右側から当て、さらに赤い補助ライトを使用して色を付けています。通常の白い光よりも、色付きのライトを使うことで、霧がより際立ち、雰囲気が強調されます。

ポイント: このように色付きのライトを使うことで、発生した霧に独特の表現を加えることができ、よりドラマチックな演出が可能です。また、撮影ブースを使うことで、撮影空間に霧が滞留しやすくなり、被写体の後ろにも充満するため、さらに幻想的な写真が撮れます。

実際の撮影風景

霧への色付けにはミニRGBライトがあると簡単に光の効果が追加できます。もちろん100均のカラーライトでも光は弱いですが近づければ霧に色付けすることも可能です。

今回の撮影で使用した”Ulanzi VL49 充電式ミニRGBライト 2287”

3. カメラ設定の基本

スモーク撮影に適したカメラ設定を覚えることで、より洗練された写真が撮影できます。ここでは、初心者でもわかりやすく設定を説明します。

  • シャッタースピードの調整
    • 速いシャッタースピード(1/200秒以上):霧の粒子や動きを細かく捉えたい場合に適しています。素早く動く霧の瞬間をしっかりキャッチできます。
    • 遅いシャッタースピード(1/60秒以下):霧が流れるような柔らかい表現をしたい場合に最適です。ただし、模型作品がブレないように三脚を使用することが推奨されます。
  • レンズ選び
    • 広角レンズ(16-35mm):広いシーンを捉え、ダイナミックな構図が作れます。霧が背景全体に広がる様子を強調できます。
    • 標準レンズ(50mm):模型作品のディテールを自然な視覚で撮影できます。霧と模型作品のバランスを取りたいときに適しています。
    • 望遠レンズ(70-200mm):背景を圧縮し、模型作品を強調するのに最適です。霧が背景と一体化する効果が得られます。
  • 絞り(F値)の設定
    • 浅い被写界深度(F2.8-F4):模型作品を際立たせるために、背景をぼかしたい場合に適しています。霧が柔らかくボケ、模型作品が際立ちます。
    • 深い被写界深度(F8以上):全体的にシャープな写真が撮影でき、ディテールを強調できます。
  • ISO感度の設定
    • 低ISO感度(ISO 100-400):霧撮影では、ノイズを抑えるために低めのISO感度が推奨されます。明るい環境ではこの範囲で設定し、クリアな画像を得ることができます。
    • 高ISO感度(ISO 800-1600):暗い環境で撮影する際には、ISO感度を適度に上げて露出を確保します。必要に応じてノイズリダクションを使用しましょう。

4. スマートフォンを使った撮影方法

最近のスマートフォンはカメラ機能が非常に充実しており、特別な機材がなくても高品質な写真を撮影することができます。各スマートフォンによって使える機能は異なりますので具体的な例をあげることはなかなか難しいのですが以下にスマートフォンを使った撮影のポイントを紹介します。

スマートフォンでの撮影例(特にこだわったこともせずオートで撮影もこれだけのクオリティがでます。)
  • マニュアルモードの活用:スマートフォンにマニュアルモードがある場合、シャッタースピード、ISO感度、ホワイトバランスを手動で調整できます。これにより、霧の効果を最大限に引き出せます。
  • HDRモード:明暗差が大きいシーンでも、HDRモードをオンにすることで、細部までシャープに撮影できます。霧と模型作品のコントラストを強調したい場合に最適です。
  • ナイトモード:暗い場所での撮影にはナイトモードを活用すると、シャッタースピードが自動的に遅くなり、霧の動きを美しく捉えられます。ただし、撮影がブレないようにスマートフォンの固定に注意が必要です。
  • ポートレートモード:背景をぼかして模型作品を際立たせるには、ポートレートモードが便利です。霧も柔らかくボケ、幻想的な効果が得られます。
  • リフレクターの活用:白い紙やリフレクターを使って光を反射させ、作品に当てることで、影のコントラストを調整できます。これにより、作品のディテールがより鮮明に映し出されます。
  • アクセサリーの活用:クリップ式マクロレンズを使って模型作品の細部をクローズアップで撮影したり、広角・望遠レンズを使って全体像や細部を強調したりすることで、スマートフォンでもプロフェッショナルな写真が撮れます。

さらに、異なる角度や構図を試すことで、新たな魅力を発見できるかもしれません。デジタル撮影は何度でもやり直しが利くので、失敗を恐れずにさまざまな試みをしてみましょう!

ペットボトルを使ったスモーク操作:スモーク撮影において、ペットボトルを活用してスモークを一時的に溜めることで、煙の量をコントロールしやすくなるテクニックがあります。この方法は、ペットボトルにスモークを溜め、その後にボトルの口からスモークを放出することで、シーン全体に均一に煙を広げたり、特定の部分に濃いスモークを当てたりすることが可能です。このテクニックはスモークの量や流れを細かく調整したい場合に特に有効で、視覚的な効果を強調したい場面で活用できます。

撮影メモ    シャッタースピード:1/80 絞り値:F4 ISO1600

霧を被写体の前方から放出しています。メインライトは右側から当て、補助的に青いライトを使用して、より冷たく幻想的な雰囲気を演出しています。さらに、メインライトの光量を少し抑え、被写体の周囲を漂う霧の様子が目立つように工夫しています。

ポイント: ペットボトルを使って溜めた霧を放出し、被写体が霧の中に佇んでいるような効果を出すことができます。この手法により、流れや動きが強調され、独特の静寂感や神秘的な雰囲気を写真に取り入れることが可能です。

5. まとめ

霧発生モジュールを使った模型撮影は、初心者でも気軽に挑戦できる楽しい撮影方法です!本格的なカメラはもちろん、スマートフォンや100均で手に入る手軽な機材でも、ライティング次第で十分楽しめるのが嬉しいポイント!

自分の作品をクリエイティブに演出して、SNSやWebにアップすれば、きっと他の模型ファンに刺激を与え、新たなインスピレーションを広げることができるはず!ぜひ、この機会にあなたの作品をエモーショナルに表現してみてください!

 文:ビット・トレード・ワン東京デザイン室   
撮影指導:倉元一浩
フリーフォトグラファー。神奈川県出身、神奈川県横須賀市在住。武蔵野美術大学卒業。マイコンBASICマガジンレスキュー隊からキャリアをスタート、撮影技術を学ぶ。2006年にはBSフジの競馬番組「私を競馬に連れてって」に解説者としてレギュラー出演、現在は競馬を中心に各種スポーツ、アイドルからガンプラまで守備範囲の広いフォトグラファーとして活動中。

撮影ブース協力:童友社(https://doyusha-model.com/) 

被写体モデル協力(老師ツェメン):©イササ
X:https://twitter.com/isanatolu  インスタグラム:https://www.instagram.com/isasadamari/

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